介護業界のM&Aとは?
「会社譲渡」と「事業譲渡」
ここでは営利法人の場合を対象にしてお話をさせて頂きます。
介護分野のM&Aは、「会社譲渡」と「事業譲渡」に大別されます。
介護事業の場合は「事業譲渡」
介護事業の場合、「事業譲渡」の取引比率が比較的に高いのが特徴です。
その理由としては、
- 介護以外の事業を営む法人が多いこと。(部門譲渡の場合)
- 複数の介護サービスを行っている事業者が多いこと。(一部の介護サービスを譲渡する場合)
- 譲渡先法人が過去に行った不正請求等からリスクを回避できること。
- 不採算事業所のみを選択して譲渡な可能こと。
といった点が挙げられます。
契約から受け渡しには2~3ヶ月
「事業譲渡」は行政手続上、買主の「新規申請」と売主の「廃業届」を同時に行うことになります。
従いまして、売主と買主間で最終契約が締結された後に行政手続きを行いますので、契約から受け渡しには2~3ヶ月間を要します。
また「事業譲渡」は、譲渡時における「申請要件」を満たす必要があります。
介護事業所の供給不足気味であった数年前までは行政サイドの審査が甘い状況もありましたので十分に留意する必要があると言えそうです。
◆「事業譲渡」・・・その他のポイント
・最終契約前に譲渡後の賃貸条件の変更がないかどうかを賃貸人に事前確認すること。(度々トラブルが発生します。更新料・仲介料等の有無も含む)
・最終契約前に主要スタッフの去就を事前確認すること。(申請要件のうち、人的要因が満たせなくなる可能性もあります。)
・お借入がある場合は事業譲渡する旨を金融機関に通知し、了解を得ること。(債権者には譲渡否認する権利があります。)
「会社譲渡」のケース
次に「会社譲渡」を見てみましょう。
「会社譲渡」とは、介護事業を運営する法人まるごとすべてを売却(買収)することをいいます。
会社のバランスシートで見ていきますと図1のようになります。
(図.1)
したがいまして、営業に使う資産だけではなく借入や未払金等の負債もいっしょに引き継ぐことになります。
主なメリットとしては
- 多店舗を広範な地域で運営している法人の場合、同時に多数の行政地域で新規申請をする手間を回避できます。
- グループホームや特定施設等の許認可事業を引き継ぐことが可能となります。
- 行政への新規申請手続きが不要なため、迅速な対応が可能となります。
- 売主にとって創業者利益が多い場合には、分離課税となりますので節税効果が高い。
といった点が挙げられます。
◆「会社譲渡」・・・その他のポイント
・会社譲渡では引継ぎ前の会社の不正行為にも責任を負うことになりますので、買収監査は事業譲渡よりも慎重に行う必要があります。
・旧経営陣による会社への貸付がある場合、株式譲渡と同時に貸付債権の扱い(譲渡)も取り決めておく必要があります。
・借入金は譲渡時に一括弁済するか、お取引のある金融機関への借り換えをお勧めしております。
・訪問介護サービスは事業譲渡によるスタッフの離散が懸念されます。弊社では会社譲渡の選択を検討することを勧めております。