<インタビュー>2016年の介護業界とM&A
弊社代表・津川敏夫インタビュー記事(高齢者住宅新聞掲載記事)
M&A仲介などを手掛けるアービーウェルフェア(東京都品川区)は、小規模介護事業者の案件を数多く手掛けている。2015年報酬改定後のうごきについて、また今後の予測を津川社長に聞いた。
(アービーウェルフェア代表 津川 敏夫)
━━━2015年は報酬改定の年であったが特徴は?
- 介護報酬改定の影響は免れなかった。昨年譲渡が決まった案件の種別はデイサービスが9割。その中でお泊りデイとリハビリ特化型デイが圧倒的に多かった。後半になるにつれサービス付き高齢者向け住宅の相談も増えてきている。
━━━譲渡理由で多いのは?
- 相談ベースで一番多いのは「立上げの失敗」だ。介護事業を安易に考えているケースが少なくない。事業計画を見ると、開業半年で黒字化を目処にするなどで手持ち資金も少ない。当然早々に立ち行かなくなってしまう。このケースでは、(看護師を抱える)訪問看護は別として譲渡先は見つけにくい。当社が仲介した事例では、デイの場合6割程度の稼働率が必要といえる。
━━━譲渡先が見つかるケースの内容は?
- 稼働率が半分に満たない場合でも、拡張の余地がある物件であれば買い手が付くことは少なくない。例えば現状定員10名の小規模デイで運営していても、18名まで増やせる施設の広さがあれば買い手も検討しやすい。
- 訪問看護については赤字であっても看護師が揃っていれば譲受希望は多い。
━━━これまで介護事業の承継を見てきて特徴的なことは?
- 昨年だけで20数件の承継を手伝ってきた。
- 理由は様々だが、異業種から入ってきた場合、自分で運営をするのではなく介護事業所の運営経験者を採用して任せるケースが多い。介護事業はいわゆる一般的な利益追求型企業とは異なるため、異業種出身者はその独特な感覚を理解できないのではないだろうか。
- 逆に、介護事業経営者でも「想い」が強すぎるあまり、数字の管理がおろそかになってしまい経営に息詰まるケースもある。やはり利用者・スタッフを守っていくためには「想い」の部分と「数字」をうまくみるバランス感覚が求められている。
━━━譲渡を検討する経営者はどういう想いなのか?
- 売却する経営者は責任感が強い人が多い。今の利用者やスタッフの今後を考えているからこそ、しっかりとサービスを提供してくれて雇用を守ってくれる譲渡先を探したいと考えている。そこを考えなければ廃業するまでだ。当社としても、少しでも可能性があるのならそれをサポートしたい。それが利用者やスタッフを守ることにもなる。
━━━承継後に失敗するケースはあるか?
- 自社のやり方を押し付けるようだとうまくいかない。これまでにも承継後にスタッフがぞろぞろと辞めてしまったということもある。現状を見て、対話しながら徐々に変革することが重要だ。特に女性が多い職場であり、介護に対する「想い」を理解しないとなかなかうまくいかない。
━━━2016年以降はどう動くか?
- 2015年の報酬減をなんとか持ちこたえてきたが、1年経って資金繰りに窮するところが増えてくるのではないだろうか。最近は介護報酬を担保にして運転資金を借り入れるファクタリングの利用も増えている。
- また2018年に向けて、お泊りデイについてはスプリンクラーの問題が大きいだろう。1~数カ所程度を運営している事業者が設置費用負担に耐えられないケースが出てくるかもしれない。期限である2018年3月末に近づくほど譲渡価格は下がっていく。譲渡を考えるならば早めの検討が必要だ。
━━━介護以外も取り扱うのか?
- クリニックや調剤薬局など様々だ。直近で圧倒的に問い合わせが多いのが、障害者グループホームや就労支援。まだまだ事業所自体が少ないが、介護事業者が障害者分野に進出するケースは、保育と並び増えていくことは確実だろう。
※このインタビューは、「高齢者住宅新聞」2016年1月6日付に掲載されたものです。
アクセス
本社所在地
名称
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アービーウェルフェア株式会社
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代表者
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津川 敏夫(TSUGAWA TOSHIO)
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所在地 (本社)
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〒140-0002
東京都品川区東品川4-12-9品川シーサイドビュータワーⅠ-2207
TEL. 03-6384-7594
FAX. 03-6369-3200
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設立
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2014年12月
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事業内容
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M&Aコンサルティング
ファクタリング・アレンジ
事業再生コンサルティング
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関連法人
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アービーキャピタル・コンサルティング株式会社(H17年11月)
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